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爪哇回顧録 21


Pengamen(プンガメン)という言葉がある。

これは”ストリートミュージシャン”とか”流し”という意味なのだけれど、ジャワのプンガメンの活動の場はストリートだけではない。

屋台や飲食店の中、バスや鉄道にも乗り込みジャカジャカ演ってはカンパを募りそして風のように去っていく。

僕はよく夜行バスや高速バスに乗ってあちこち出かけたけれど,

価格帯の安いバス、例えばsumber kencono(直訳すると”金の源”)はじゃんじゃんプンガメンや物売り、パフォーマーなどがひっきりなしに乗ってくるのでそれはもう賑やかで飽きない。物売りから買った揚げ豆腐と青唐辛子をかじりながらそれらを鑑賞する。他のお客さんはというとジロジロと見るわけでもなく自然と空気のようにプンガメンを受け入れ、移ろう窓の外の牧歌的風景を遠い目で眺めたり、巻きタバコをくゆらせていたりする。


基本的にバスには運転手とユニフォームを着た車掌の二人体制(時には車掌が二人)なのだけれど、満員で混んでようがバス側は全くプンガメンを追い払ったりしない。

バス内の状況がどうあれプンガメンはライブをやり切って他の乗客が降りるタイミングに合わせて去っていく。

ちなみにバス停はなく降りたい人は窓をコンコン叩いたりして車掌さんに知らせる。

降りる際は車掌さんが周りの車から乗客を守りつつ降ろす。

降ろすや否やバスはけたたましく真っ黒な排気ガスをぶっ放し走り出す。

それがひたすら繰り返されるのである。


プンガメンの中には自信なさげで演る者もいたり、アンプを首からぶら下げマイク片手にカラオケするタイプ、歌と打楽器だけのタイプ、バイオリンのインストものや、音楽ではないけどガラスを食べる!?パフォーマンスをする強者など、バス旅はものすごく思い出深い。

そしてとても印象的だったのは

全てのプンガメンが示し合わせたようにカンパ袋として

スナック菓子などの袋を裏返したもの(銀色が外側に出ている)にしていたことだ。

ギグのあと各座席を周りこの入れ物をぐいぐいと押し付けてくるのである。


ところでバスの運転は逆車線を走って追い越ししたり前の車を煽ったり、スピード出しすぎだったりと危険運転極まりないので、もし乗ってみたいなと思った方はその辺注意です。


でも15年以上も前の話だからもうそんな運転は無くなっているのかなあとか思いつつ、

バスの中の人々が織りなすそこはかとない温かさが蘇り

じんわりと心に沁み渡るのでした。




これはスラカルタに向かう高速バス内。

歌とギター、パーカッション(筒にゴムを張ったパーカッション)のデュオのゲリラライブ。2007.6.20

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